実物供試体による凍上を模擬した太陽光パネル架台のジャッキアップ実験を行いました

調査

 近年、道東地域において、凍上現象に起因すると思われる太陽光発電施設の被害(支柱のねじれ変形や、太陽光モジュールの反り)が相次いでおります(写真-1)。このような現象に対し、本研究チームでは、これまでの実験によって凍上対策となる基礎形式および根入れ長を明らかにしております。一方、既存施設に対して基礎を再施工することは費用面から現実的ではなく、凍上によって太陽光発電施設の性能が低下する前に適切な措置を講じる必要があります。

b) パネルの反り上がり
写真-1 凍上被害  a)支柱のねじれ挙動

そこで本実験では、杭種の違いが凍上時の部材応答へ及ぼす影響を把握するため、実寸法の太陽光発電施設を用い、凍上を模擬した強制変位実験を実施しました。供試体1には、「径89.1mm、長さ1.2mの鋼管杭」を、供試体2には、「径89.1mm、長さ1.2mのスパイラル杭」をそれぞれ施工しています(写真-2)。

供試体1 : 鋼管杭        供試体2 : スパイラル杭 
写真-2 実験対象構造

 実験の結果、両方の杭ともに、反時計回りに支柱がねじれることを確認しました(写真-3)。杭がない状態でジャッキアップした前年度の実験でも、支柱が反時計回りにねじれたことから、鋼製架台の構造特性に起因するものと考えられます。つまり、杭のねじり抵抗よりも支柱が回転する力が大きいということになり、実際に生じる現象のメカニズムを解明できたと考えています。

 実際に生じる60mmの凍上においても、部材同士を接続するプレートに変形が生じており、設計荷重に対するパフォーマンスの低下が懸念されます。このため、ねじり変形を抑制する簡易的な補強構造の検討が必要と考えています。なお、本結果は、表-1に示す構造分野と地盤分野の専門家が協働したことで得られたものであり、引き続き、大学内の分野間連携を強化し、地域課題の解決に向けて尽力していきます。

 本研究開発は、公益財団法人土科学センター財団による支援を受けています。

写真-3 実験後の状況

          表-1 体制表

門田 峰典北見工業大学 助教鋼構造,橋梁工学
中村 大北見工業大学 教授地盤工学,岩盤工学
片岡 沙都紀北見工業大学 助教地盤工学,産学官連携

文責 門田