橋を構成する部材の中で,床版は,荷重を直接支持する重要な役割を有しています.床版に生じる変状としては,剥離,遊離石灰など様々存在しますが,耐荷力に影響を及ぼす変状として土砂化が挙げられます.この土砂化は,コンクリートが骨材とモルタルとに分離する状態を言います.凍結防止剤を散布する寒冷地での事例が多いこと,交通量に依存しないことから,北海道においても多くのコンクリート床版で発生しており,維持管理上の課題となっています.
通常,コンクリート床版は上面が舗装に覆われるため,土砂化の有無やその程度を目視で確認することが困難となります.このため,部分的な舗装のはつり調査や,電磁波を利用した調査が行われますが,交通規制や機器の使用などで生じるコストは決して安価ではなく,人材および財政的な課題を抱える自治体にとっては採用が難しい場合もあります.
そこで,本研究部門では,土砂化の有無ならびに床版の耐力を加速度応答から簡易的に把握する研究を行っております.今回,道路管理者に許可をもらい,床版の土砂化が疑われるRC床版橋に対して,振動計測を行いました.計測前には近接目視による点検およびハンディースキャンによる調査を実施し,土砂化が疑われる範囲を明確にしました(写真-1).併せて,将来,橋梁業界で活躍する大学院生に対し,教育も行っております(写真-2).計測内容として,舗装上面に9つの加速度計を設置し,ハンマーによる加振,車両走行による加振を行いました(写真-3,4).今後,得られた各センサ位置での加速度応答を基にし,振動特性の相対的な変化から土砂化の範囲を特定するとともに,加速度応答を2階積分することで得られる変形量にて健全性を評価します.本技術により,寒冷地における橋梁維持管理の高度化を目指します. 文責:門田